時間が経つのはあまりにも早く、時に残酷だが、歴史を知ることで時の経過を楽しく感じることもできる。
僕は今、フィンランドへ向かう空の上でこのブログを書いている。(後半部分は、パリから羽田への飛行機の中で書いた)

7/3からOQT(パリ五輪最終予選)が始まり、自分たちの練習と並行して、毎日夜中はOQTや、他の国の強化試合を見てスカウティングをする日々が続いている。
パリ五輪で自分たちのグループの対戦相手となるラトビア会場は、当然全ての試合をチェックしているが、1人のバスケ人として他の3会場全てが気になるのは言うまでもない。
試合は歴史そのもの
実はまさに今、飛行機の中で見たかったプエルトリコvsリトアニアの決勝を見ていた。リトアニアやイタリアというヨーロッパの強豪国が揃う過酷な組み合わせだったが、見事にプエルトリコが決勝を制し、20年ぶりの五輪への切符を獲得した。
プエルトリコが歴史的にバスケットボールに熱い国だということを知っている人は少ないかもしれない。彼らが最後に出場したのは2004年アテネ五輪だ。
この時プエルトリコはグループリーグの初戦で、アイバーソンやダンカンなどのスーパースターを擁するアメリカ代表から金星を奪っている。マエストロの異名を持つPGのアローヨのプレイに、世界中のバスケファンが酔いしれたものだった。僕自身もその1人だ。
OQTの決勝のコートサイドにはそのアローヨの姿もあった。自分の後輩である小さなガードたち、アルバラードとウォーターズの躍動をどんな気持で見ているのだろうかと想像したくなる。
きっと彼ら2人も、アテネ五輪でのアローヨの活躍を、テレビの前で目を丸くして見ていた少年だったのではないか。
OQTで最も注目の会場は、ギリシャ会場だった。ギリシャとスロベニア、現在の世界トップ5の選手と考えられているドンチッチとアデトクンポのどちらかは、パリ五輪でプレイすることができない。五輪出場とはそれくらい難しいことなのだ。
大好きなチームは人生を変える
僕がギリシャのバスケに思い入れが深いことは、そのうちもう少し触れたいと思っている。2006年、日本でワールドカップが行われたあの夏、僕はギリシャ代表のバスケに夢中だった。夢中だっただけでなく、前年の2005年のユーロバスケットでのギリシャ代表の優勝をビデオで見ていた僕は、あのアメリカ戦でもギリシャの勝利を予想していた。いや、期待していたという方が正確か。
そして、あのコーチKが率いるアメリカ代表に勝利し、歓喜の輪を作ったあの試合を、僕は埼玉スーパーアリーナで見ていた。歴史の目撃者になった瞬間だった。それがきっかけで僕は2回もギリシャを訪れている。
あの時のギリシャがどうして強かったかを理解している人は、あまり多くはないだろう。(ここでは複雑なバスケの話をするつもりはない)ギリシャにはNBAでプレイした選手は2人しかおらず、その選手たちも数年でNBAを去っている。
今回のパリ五輪出場を決めたギリシャ代表が五輪に出場するのも、なんと2008年の北京五輪以来、実に16年ぶりらしい。今回は前回出場したチームとは全く世代が変わって、当時の選手は1人もいない。バスケ史上屈指の選手と語り継がれるだろうヤニス・アデトクンポがチームの中心だ。(彼がどんな環境でバスケをプレイし、NBAにたどり着いたか、いろんな文献があるのでぜひ目を通してもらいたい)
当然、ヤニスにとって最初の五輪でのプレイとなる。もちろん、最後の大会になる可能性だって十分にある。
全く違うチームとはいえ、受け継がれるものもある。HCはあのアメリカ戦で6thマンながら22得点、勝利に大きく勝利に貢献したヴァシリス・スパヌリスなのだ。スパヌリスはNBAで1年プレイしたものの、NBAではメイン選手になれなかった。しかしながら、彼はユーロリーグでいくつもの伝説を作ったレジェンドだ。
五輪出場を決めた決勝は、スロベニアに一瞬の隙も与えない見事な試合だったが、試合途中でちょこちょこ画面に映るスパヌリスの仕草が気になって仕方ない。試合に集中していないわけじゃないから許してほしい。

USAも20年の時を過ごしている
最後にもう一つ話をしたい。
レブロン・ジェームスの話だ。
レブロンは、先に話したプエルトリコ代表、ギリシャ代表に敗れた、アメリカ代表の一員としてプレイしている。2004年は若手をあまり起用しないことで有名なラリー・ブラウンがHCだったため、たったの13分の出場で5得点。プエルトリコに92-73と屈辱的な敗れ方をしている。そして、2006年には完全にアメリカ代表の中心選手となってリベンジしたが、ギリシャ代表に完敗した。
レブロンにとって初めての五輪、ワールドカップは銅メダル獲得という結果で終わった。
さて、パリ五輪が始まる(もう終わった)。
今回のUSAのロスターにまだ入っていることを考えると、レブロンだけは完全に時間というものを超越しているのではないか。
それはさておき、アメリカvsプエルトリコ。アメリカvsギリシャの試合があれば、全く別の角度から試合を楽しむことができる。(実際、前者のカードはあったので、試合を振り返ってみたくなってきませんか?)
これは、ストーリーを知っている人間の特権だ。
20年の濃密さ
こんなことを考えながら、大会へ向かう飛行機の中でワクワクが止まらない。
時の流れは早いが、その時間の経過は間違いなく、試合やチーム、選手を味わう上でのスパイスとなる。これが、NBAを見ながら自然に学んできた、バスケを誰よりも楽しむ方法なのだ。
そして、20年前にテレビのリモコンを片手にNHKのオリンピック放送に釘付けだった僕は20年後、チームと共にフランスに向っている。



